お馴染み、オーディオ向NASの代名詞的存在”DELA”。
“DELA”に焦点を当てたイベントはもう数えきれないほど開催しているわけですが、今回はちょっと異質な方向で。この方もお馴染み、メルコシンクレッツ荒木さんをプレゼンターに「ほとんど音楽を鳴らさないDELAイベント」をやって頂きました。
オーディオイベントなのに音楽を聴かない、これ如何に?という事でございます。「これって本来のNASを超越した機能だわー」というところにまでDELAが進化して行った裏話や、DELAを操作出来るコントローラーアプリあれやこれやのご紹介、「かの美しいジャケットの並びでお馴染み」タグ付けをはじめとしたライブラリ作成のコツを伝授して頂こうというわけです。云わば、アタマで理解するDELA”知識編”と”実践編”。
盛りだくさんの内容の中で特に関心の高かったものが、「ライブラリ作成のコツ」編ですね。
荒木さんが仰るには、これ、完成形はいろいろな場所や媒体でお見せしてきたものの、「ライブラリ構築の実践については全然話していなかったかも」との事。完成度が高くて、見るだけでワクワクしてくる荒木さんの手によるDELAのライブラリ。「これ、どうやって仕上げてるんだろう?」と関心を寄せていたのです。そんなわけで、荒木名人の大技小技、教えて頂きました。
▽何ゆえ、手でタグを弄らねばならんのか?
普通にリッピングしてもタイトルとかの基本的なタグは自動で入るのです。が、その自動入力されたタグ、曲やアーチストに想い入れがあればあるほど違和感が。これ、CDのような物理メディアで聴くときには全く気にならなかったのに、ファイル再生をやりだすと何故か気になってくるところ、と名人は指摘します。
例えば・・・
「アーチスト名表記がアルバムによってバラバラ」
「同じ曲なのに収録アルバムが違うとタグの打ち方も変わってる」
「作曲者名が入ってないか間違ってる」
「ジャンルが統一されてない」
「デュエット曲とフューチャリングの曲がアルバムから孤立する」
「国内盤なのに海外盤のジャケ写になってる」
「CDになってから追加されたボーナストラックなんかは、本来のアルバムの楽曲とは分離させておきたい」
踏まえ、名人は仰います。
『好みは人それぞれ。自分でタグを直すことでのみ平和は訪れる』
こういうのは結局手で弄らないとどうしようもないんだわ。イライラしたって仕方ないんだわ。という事ですね。大変奥の深いお言葉でございます。
▽まずは心構えから
『タグ直しを”作業”と思わない。カセットラベルのように凝れ』
提言として、名人は諭します。我々、カセットレーベルの台紙やデザイン画、インスタントレタリングとか文字にも拘ったじゃないか。そこに時間も入れたじゃないか。あれは作業だったのか?っと。自分でコレクションするために手を加える事をして、それは作業じゃなく趣味の一貫だ。楽しいことだと前向きに考えようではありませんか。とメンドクサガリな筆者をも含めてグダグタ言い出す戯言なんぞアッサリ喝破してしまいます。「名人、ごめんなさいでした」
▽手順を知る
よりきめ細やかに手直しを実現するため、名人は作業工程を以下のように定義します。
【名人ご推薦:マニアック工程】
1.リッピング
2.フォルダ分け直し
3.タグ付け直し
4.カバーアート付け直し
5.デバック(不具合修正)
【参考:通常工程】
1.リッピング
2.タグ付け直し
3.デバッグ(不具合修正)
タグの付け直しを実行してる時点で既にマニアックなのではないか?というツッコミもあるようですが、あくまで「名人比」でございますので悪しからず。
※注:フォルダ分け直しとは?
・そもそもLPには入ってなかった”なんとかmix”みたいなボーナストラックの分離作業(そこは分けたいじゃないですか、というお話だそう)
・ベスト盤を分割してシングル盤扱いするための作業(シングルにはシングル盤のジャケを付けたいじゃないですか、というお話だそう)
とかを指すんだそうです。
『レコード会社にも都合はあるんだろうが、聴く側にだって都合はある』
こちらも名人の尊いお言葉でございます。
▽想いを持って拘り、そして手は掛けるが、可能な限り楽もする
ここはツールのチカラを全力で借りましょう。その文明の利器、”タグエディタ”というものが当たります。
名人、これにも要件があると仰います。
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1.自分の使っているファイル形式に対応している
2.全ファイルを一覧することで不具合をチェックできる
3.複数ファイルの一括修正ができる
4、タグのコピペができる
5.直したタグ情報でファイル名そのものも修正できる
———————-
特に2と3は重要なのだそうです。
と言いますのも、1アルバムの中身を見ると当然にタグの打ち方は揃っているんですが、同一アーチストによる複数のアルバムの中身を並べて俯瞰してみると実はバラバラだったというのが多いわけです。ですので、対照ファイルすべてのタグを一覧にして見れないと困るのだ。ついでに、複数ファイルの修正を楽に出来ないと面倒なのだ。との事。なるほど、ごもっとも。
加えて、ファイル名もタグ情報同様に修正しておかねば、PC側でファイル操作する際に面倒なことになるから配慮しておくべきポイント、と名人はご指摘されます。
で、名人ご推薦のツールは以下の二つ。イイとこイマイチなとこ、それぞれあるのだそうですが。お話を伺いつつ実際に名人による操作を見せて頂くと、これはなかなか良さそうな気配。皆さまご参考にどうぞ。
・Windows用
“Tag & Rename” シェアウェア30ドル
※ちなみに今回のイベントはこれを使ったそう。
・MacOS用
“YATE” シェアウェア20ドル
※超多機能らしいですが、GUIの問題から少し機能が探しにくいそう。
▽解説はより実践的となり、まだまだ続く
タグ篇、ここまでで既に20分。激しく濃いですよね。これ、まだまだ続くのです。例を挙げますと、こうやってカスタムしたタグをDELAはどの様に読み取って、バラバラな曲を集めつつアルバムなどの共通したグルーブと見なすのか、とか。こういうハード側の振る舞いは、タグ付けにおける基本的な留意点として認識しておくべきところですよね。
ハード側で “アーチスト名タグとアルバム名タグが共通の場合に同一アルバムの構成楽曲と判別している場合” において、「アーチスト:だれだれ」と「アーチスト:だれだれ with なになに」の2曲は別なアーチストとして認識されます。そのため、この2曲の “アルバム名タグ” の記述がたとえ共通であったとしても、同一アルバムの楽曲としては判別されません。これ、最初の方に書いた「デュエット曲とフューチャリングの曲がアルバムから孤立する」という現象の原因に当たります。アルバムに収録された楽曲をみると、そういう例って案外ありますよね?
この例では普通 「with なになに」 の記述を諦めるしかないわけですが、ここでDELAの機能です。過去のバージョンアップにより、「アーチストタグ」に加えて「アルバムアーチストタグ」にも対応しているのだそうで、”アルバムアーチスト名タグとアルバム名タグの組み合わせによる判別”も可能なのだそう。要は、曲のアーチスト名義とアルバムのアーチスト名義を分けられるというわけですね。それならば、アーチストタグはそのままにして、アルバムアーチストタグで「だれだれ」を新規で追加入力しておくと万事解決。曲とアルバムの実態に則した形でタグが打てるというわけです。
※注:もしハード側がタグの複合的な判別方法を取らなければ、仮に異なるアーチストによるGraatest Hitsという同名アルバムが複数枚あった場合、それらをすべて同一アルバムとして判別してしまう事につながります。結果、本来アーチストで分離されるべき楽曲がすべて一緒に表示され、実に具合が悪いのです。
延々とこんな様子でございまして、イベントにいらした方は相当勉強になったんじゃないかと思うのです。多くのお客様は資料スライドが表示される度に写メっておられまして、他ならぬイベント進行側の私すらも「メモメモ」な具合でございました。こんな形で行われました、「ほとんど音楽を鳴らさないDELAイベント」。お楽しみ頂けましたでしょうか? 評判も上々でしたので、また機会を改めて企画出来ればいいな、と考えております。今回を見逃した方、次回のチャンスはお見逃しなく!
最後に、ご参加頂きましたお客様には厚くお礼を申し上げまして、イベント報告とさせて頂きます。ご来場、誠にありがとうございました。