canarino DC power supply 12V をこの度リリースいたしました。いろいろな想いを込めて手を抜かず作り上げた、私たちのブランドが手掛ける初めてのオーディオ用DCパワーサプライです。お伝えしたいことが山のようにあるのですが、製品のご紹介を兼ねつつ掻い摘んで。
canarino DC power supply 12V 製品企画担当より、オーディオを愛する皆さまへ
▽始まりは「canarinoの名をオーディオブランドとして確立させるために」
私たちはここ数年の間、黙しつつそんなことを考えていました。これを裏返すとすれば、「PCによるオーディオの可能性をもっと突き詰めていくこと」につながると捉えたのです。
時の積み重ねに伴う経験則で導かれたオーディオの常識、そして理想。一方ではコンピュータの本質や振る舞いへの正当な理解。折り合いという名の「価値観の橋渡し」はこれまでだって決して容易なものではなかったのです。が、ここの数年の様相をしますと過去とは話が変わったほどに険しい道でした。特に電源という存在はその最たるもので、オーディオという特殊な価値観の象徴であり、他方ではコンピュータの安定した挙動を保証得る極めて重要なピース、と指摘できるからこそ頭を悩ませていました。
すべてのオーディオに通用する高品質なパワーサプライであって、且つオーディオを志向したPCにも相応しいハイエンドパワーサプライとしての要件を満たす。「折り合い」というスタンスでは、既にそれをモノにすることができなくなっていた。ならばゲームチェンジャーにも成り得るcanarinoブランドのオリジナルDCパワーサプライを我々の手で世に放とう。オーディオとしての趣味性をフルスケールで感じ得る強力なコマの展開とは、オリオスペックにとって古くもあり新しくもある深刻な課題だったのです。
▽純国産オーディオ用DCパワーサプライがもたらす新しい世界に誘いたい。原産国表記は日本、製造にまつわる一切で日本国内のスペシャリストが揃い踏みです
この電源はパソコン電源のためだけに開発したものではありません。DC12Vを本体外から給電される仕組みのコンベンショナルなオーディオ機器との組み合わせをはじめとして、PCオーディオおよびネットワークオーディオ関連機器にも適用可能な高品質、且つ大容量の外部電源ユニットとして開発しています。もちろんですが、合わせて弊社製オーディオPC canarinoで利用可能な最上級電源ユニットとしての適性も持たせるよう作り込まれた、純然たるオーディオ用DCパワーサプライです。
国産のウルトラローノイズな複合共振型スイッチング式電源ユニット(弊社独自仕様品)をエンジンに、シールドや放熱へも万全を期するケース素材やその厚みから始まり、内部の隅々に至った我々のオーダーを叶えんがため、オーディオ製品の製造経験が豊かな国内OEMベンダーの手で高い精度に仕立て上げられました。言うなれば、純粋な意味合いでのメイド・イン・ジャパンなDCパワーサプライとも表現できます。
あらゆる種別のオーディオ機器に適合するDCパワーサプライである以上、もちろん“ひし形PSE”の認証も手抜かりなく取得しています。そのお墨付きすら厳しい検査を実施している国内の審査機関から得たもので、ノイズレベルなどのスペックや音質だけに留まることのない信頼の証がここにあります。
▽日本製のウルトラローノイズな複合共振型スイッチング式電源ユニットという選択肢をオーディオの世界にも
スイッチング方式にしてリニア方式に比肩し得るウルトラローノイズを現実のものとするのは、細部にまで調整し尽くされたソフトスイッチングと呼ばれる振る舞いによるもの。それは、電圧共振と電流共振という二つの共振回路を組み合わせた“複合共振”と呼ばれるダイトロンオリジナルの仕組みで実現されています。電源ユニットが発する各種ノイズでオーディオ以上に厳しい要求を突きつける特殊且つ専門性の高いクリティカルな機器の分野において、リニア電源からのマイグレーションを目的に多くの採用実績を有しているのが、そんなダイトロン製スイッチング式電源ユニットなのです。
小型にもかかわらず大きく安定したDC出力が実現できるスイッチング方式のストロングポイントをそのままに、オーディオマニアを含めた“電源由来のノイズに対し厳しい姿勢を貫くユーザー”すら納得させるであろう常識外れの電源ユニットは、実のところ我々の目の前に存在していました。比較対象をリニア電源のそれとした方が望ましいDC出力側のリップルノイズレベル、仮にアイソレーショントランスを前段に追加したとしても事実上機能することは無かろうと言い切るAC入力側の雑音端子電圧(入力帰還ノイズ)レベル、それらの振る舞いと同じくする極少の不要輻射、対策が厄介なコモンモードノイズの低レベル化の実現。複合共振型によるソフトスイッチングの特長をして、ハードスイッチングとしてふるまう、即ち従来のスイッチング電源が示す様相とは全くオーダーを異にするもの。故に過剰なノイズフィルタリングの仕掛けすら無理なく省略出来た、と開発ベンダーは冷静に語ります。しかもそれは特許技術と産業界での実績に裏打ちされた、信頼するに相応しい日本製。
canarino DC power supplyのメインエンジンには、「そもそもノイズを出さない」コンセプトで作られたこのダイトロン製複合共振型スイッチング式電源ユニットをベースにしていて、加え、オーディオ機器の価値をよく知る城下工業のノウハウをも融合させた“弊社独自のカスタムユニット”を採用しています。分野を跨るスペシャリストたちの知見を結集したエンジンの搭載は、あらゆるオーディオのためのアウターDCパワーサプライを謳わんがために私たちが特別拘った点のひとつです。
▽このDCパワーサプライは弊社のオリジナル製品ですが、以下の国内三社による協力関係で製品化されました
<企画及び発売元、当該製品の問い合わせ先>
有限会社オリオスペック (本社:東京都千代田区)
https://www.oliospec.com/
※当該製品が冠するブランドは弊社オリジナルのオーディオブランド“canarino”です。
<設計製造、及びひし形PSE認証取得業務>
城下工業株式会社 (本社:長野県上田市)
https://www.shiroshita.com/
音響及び通信機器等の電子製品の企画開発、製造販売を行う。自社ブランド(Sound Warrior, Road Warrior)の展開をはじめ、国内高級オーディオメーカーへのOEM供給の実績が豊富。また日本国内でのPSE認証取得に関する知見が深い。
<複合共振型パワーサプライユニットの供給、及び各種支援>
ダイトロン株式会社 (本社:大阪府大阪市)
https://www.daitron.co.jp/
ノイズや漏洩電流に対し極めて厳しい要件を持つ計測機器、分析機器、理化学機器、生産設備を例としたクリティカルな装置の電源として多くの採用実績を持つ、日本の高性能なスイッチング式(複合共振型)パワーサプライユニット製造ベンダー。また電子機器や部品、製造装置の技術商社でもあり、グループで製販を融合した事業を行う。
企画、設計製造、キーデバイスはすべて国内ベンダーが担当。国内ベンダー三社の連携を象徴化する形で、三社の企業ロゴにそれぞれの担当領域を添えて本体天板部へレーザー刻印を施しています。
▽DCパワーサプライユニットを構成するパーツは、ほぼすべて高品質な国産ベンダーによる製品で組み上げています
<国内ベンダーが手掛ける構成パーツ例>
・ダイトロン製複合共振型スイッチング式パワーサプライユニット
・パワースイッチ基板
・本体内部配線一式
・IECインレット
・DC12V出力端子
・アルミケース(オリジナルデザイン、梨地処理・アルマイト加工、底部と前後パネルは5mm厚)
・インシュレーター(着脱及び交換可能)
・DCケーブル線材
・DCケーブルロック付コネクター
<海外ベンダーが手掛けるパーツ>
・DCケーブル電力供給先側コネクター
「4ピンPowerDINプラグ」 ⇒ canarino DC due搭載のcanarino PC向け
「5.5/2.5径同軸DCプラグ」 ⇒ 大電流対応/ロングプラグ(海外製機器対応型)仕様
「5.5/2.1径同軸DCプラグ」 ⇒ 大電流対応/ロングプラグ(海外製機器対応型)仕様
※部品の仕様において大電流に対応する国産パーツが存在しないため、もしくは入手性が乏しいため
本体やDCケーブルの構造、構成されるパーツの選定は、設計を担当する技術者と我々の間であらゆる視点から検討されました。特に各種オーディオ機器の製造で採用実績を有するもの、且つ国内ベンダー製であることに重きを置き、そのひとつひとつが選別されています。また本体の設計や組み立てが城下工業の本社工場で手掛けられているのはもちろんのこと、その部材となるオリジナルデザインのアルミケースやキーデバイスの電源ユニット、パワースイッチ周辺の基板、ハーネスやDCケーブルについても長野県や愛知県をはじめとした国内の生産拠点で製造されたものを採用しています。
<標準設定(選択制 / canarino PC用)の4Pin PowerDIN仕様DCケーブル。本体側のロック付大型端子は国内ベンダーのパーツ>
<標準設定(選択制)の5.5/2.5(2.1もあり)仕様DCケーブル。海外製機器もOKのロングプラグは旧JIS規格を大きく超える大電流対応品>
▽製品化までの工程すべてについても国内ベンダーによって手掛けられています
・製品企画
・設計
・製造
・筐体デザイン
・ロゴデザイン
・PSE認証の審査機関
ケースの素材とその加工法、「ヒートシンクを側面にした平置き」と「ヒートシンクを上面にした縦置き」の二通りを可能にするデザインや構造の検討、空間を活かし無駄なく整理されたワイヤリング、堅牢であるべきDCケーブルの加工手法に至るまで、OEM生産を担当する城下工業の技術陣との綿密な議論を通じてひとつひとつの要件を決定しています。そしてノウハウと経験を要する国内審査機関でのひし形PSEの認証取得も、主導した城下工業側のPSE担当技術者による深い知見とダイトロン側の社内チームによる献身的な協力が存分に活きています。日本のオーディオマーケットを賑わす人々が好む品質レベルは、そのメンタリティを理解する日本のベテランエンジニアたちを介して具現化されました。
<高い精度に仕上げられたアルミ製のフロントパネルとケースサイドのヒートシンク(製品版仕様)>
canarino DC power supplyのためにあしらったニューデザインのロゴは、デザイナー eba nomizu さんの感性で描かれました。この電源ユニットがもたらすサウンド基調を表現するかの如く、しなやかに美しく、そして流れゆくように文字列が図案化されています。また純粋な意味合いでのメイド・イン・ジャパンの象徴として、製品化に欠くことのできなかった三社のロゴをそれぞれの担当領域ごとにレーザー刻印であしらいました。それは1970~80年代のジャパニーズハイファイオーディオの黄金期に輝きを放ち、そして彩った国産オーディオ機器たちへのオマージュでもあります。
<eba nomizuさんの感性による美しいcanarinoロゴをレーザー刻印で>
▽「しなやかさ」が魅力のサウンド
機器やデバイスの信頼性を物語る「根拠と実績」を満たしたとしても、オーディオである以上「優れた聴感」を得られなければならないのは至極当然の成り行きであります。
canarino DC power supplyからDC電源を供給されるオーディオ機器やPCのサウンドをゆっくり落ち着いて耳にしてください。特筆すべきは「しなやかさ」です。バックグラウンドの静けさの中、しなやかで丁寧なサウンドが踊ります。押し出しだけでなく、引きや消え際の美しさを存分に感じていただけるはず。主旋律に並行するコーラスやエフェクトなど、音楽に彩りを与えてくれる小技の空気までもが興味をかきたてるられるかの如く自然と耳にできましょう。
従来のオーディオ機器単体としては過剰、オーディオ用PCやPCベースのフロントエンドハイファイに対してはゆとりある150W(12V/12.5A)の出力です。それは、沈み込むボトム域の表現すら悠々と描き出すための効果的な手助けをします。目の前で繰り広げられる演奏へと徐々に感情移入させていく、そんなサウンドのダイナミックスです。
シルキーな美しさに加え、リズムによる躍動も感じる上質のサウンドステージは心穏やかなプレイバックサウンドをもたらすはず。これはスピーカーシステムの大きさの違い、小音量や大音量などボリュームゾーンの相違など、オーディオシステムそのものが本質的に抱える個別要素に対しても適性を問いません。誘われる興味、伴う楽しさ、そして静かに帯びていく音楽の熱をどうぞ。
▽最大出力電力150Wのゆとり。故にコンベンショナルなオーディオ機器にも、オーディオPCやPCオーディオ関連機器にも
コンベンショナルなオーディオ機器からすると、DC12V/最大12.5A、150W出力の電源は過剰とも言える容量でしょう。しかもウルトラローノイズのスイッチング電源が叩き出す実効性のある数値という点もポイントです。その著しいパワーの余力が結果としてプレイバックサウンドへと確実に反映されるであろうことは、経験値の高いベテランのオーディオマニアからすれば容易に想像がつくはずです。太く沈み込みながら踊るベースライン、空気を波紋で揺らすバスドラのキック、深くうねり突き進んでくる弦の押し出し。音楽の懐で抱かれる様々な起伏が複雑に絡み合い、二本のスピーカーが創る空気へと溶け込んでいく。瞬間に垣間見えたその感覚こそ、オーディオ再生の楽しみに他なりません。
コンベンショナルなオーディオでの恩恵と同様に、オーディオ用途のPCと組み合わせる場合でもこのパワーサプライの持つクリーン且つゆとりある電力供給能力のメリットはしっかりと示されるはずです。オーディオ用PCやマイクロコンピュータベースのオーディオ用フロントエンドへと視点を移した場合、それら機器の特徴とも指摘できる“上下変動の激しさを伴う瞬間的な電力の要求”に対しては、スイッチング方式ならではの特性で瞬発的に、且つ連続して需要の増減に追従し続けます。変化が時々刻々な機器の動作を支えるこのパワーサプライはウルトラローノイズである圧倒的な利点に加え、適性が高い故に電力供給の挙動においてもサウンド表現においても盤石な基盤として絶対の安心をもたらすのです。
容量が非常に大きいというストロングポイントは他の用途でもきっと力量を発揮するでしょう。一例ですと、ネットワークオーディオやサブスクからのパケットストリーミングの経路に当たる複数のネットワーク機器に対し、それらの共通パワーバンクで活用する手段が想像できます。市中で入手できる複数分岐用のDCケーブルを介して、DC12Vで動作するONUやルーター、L2スイッチに対してまとめて電力を供給させるというわけです。複合共振型スイッチング式の特長である極めてクリーンな電力を利用して、オーディオ用途のネットワーク機器に対するクオリティアップの一助とするのはいかがでしょうか。複数台に供給してもACコンセントの差し込みの利用は一口となりますから、潤沢な確保にも制限が生じがちなコンセント口のセーブにおいてもお役に立てるはず。また、個別のオーディオ向ACアダプターを複数購入するのとさして変わらないコストにだってなるやもしれません。トータルの電源容量は供給対象の純正ACアダプターに示されているDC出力のアンペアを積算して、その算出値が12.5Aを越えなければOKです。そんなところからも、この12.5Aという数字がゆとりに溢れた値であることをお分かりになっていただけるかと思います。
DC12Vを外部から供給され動作するタイプの機器であれば、DC入力端子形状に合わせたDCケーブルを使うことで組み合わせることが出来ます。一般的な5.5/2.1径と5.5/2.5径の同軸プラグ付DCケーブルをも標準仕様に(選択制で)設定していますので、このDCケーブルを元に市中で入手できる変換プラグを利用することでもプラグ形状の変更は容易でしょう。また専用DCケーブルの出力プラグ形状の変更やケーブル長の変更、二股のDCケーブルなど有償カスタムオーダーにも可能な限り承りますので、ご希望があればご購入時にご相談ください。
つまるところ、canarino DC power supplyの用途はあなたのアイデア次第で如何様にもひろがっていくはずなのです。
<市中で入手できる5.5/2.1二分岐DCケーブル、5.5/2.1⇒EIAJ4変換プラグの例>
<有償カスタムオーダーを想定した二分岐DCケーブルの例(試作品)、5.5/2.1と5.5/2.5のツイン、ショートプラグ仕様)
▽もちろんcanarinoの最上級電源ユニットとしての素養も抜群です
canarino PCの最上級電源ユニットとしての組み合わせは、当然ながら企画段階より想定しています。特に、canarino DC dueを介したツイン電源仕様でのパフォーマンスは折り紙つきです。「canarino DC dueによるツイン電源の恩恵」という名の凄みとは、canarino DC power supplyの持ちうる高いポテンシャルを存分に引き出し切ったサウンドによって改めてお気付きいただけるはずです。
canarino DC power supplyの登場によって、canarino PCが秘めていたオーディオ機器としての輝きはまた一段と磨きが掛かることになりました。シングル電源で使いますとメロディーラインのしなやかさを華麗にして象徴的に、ツイン電源に強化しますとその魅力に加えてボトムに沈み込み、躍動するリズムラインまでをダイナミックに表現し切ります。それは歴代canarinoシリーズ中、最高のサウンドです。存分に満喫なさってください。
<左:canarino PC(canarino DC due仕様) 、中:canarino DC power supply 12V 試作機、 右:canarino DC power supply 12V 製品版>
▽追記です
canarino DC power supply 12Vに関わる各社の方からそれぞれの担当領域についてエピソードを伺いました。滅多に聞けないお話、調べてもあまり詳しく書かれていないようなお話が詰まっております。記事の補足としまして、弊社Youtubeチャンネルでどうぞ。
「超低ノイズを標ぼうする、複合共振型スイッチング式電源の基礎を知ろう」
キーワードは “ソフトスイッチング”
<プレゼンテーション:ダイトロン株式会社 齋藤様>
https://youtu.be/np5AsbuW3eE
「長野県上田市の経験豊かなベンダーさんが手掛けています」
“あ、そうなの!” とお気づきになるかもしれません。まずは城下工業さんの企業紹介を
<プレゼンテーション:城下工業株式会社 竹原様>
https://youtu.be/9Mgi-RiUr6E
「めんどくさいことは全部この人たちがやってくださいました」
“素人の妄想” を “玄人が玄人のやり方で” モノにしていく、というお話
<プレゼンテーション:城下工業株式会社 設計担当 井田様>
https://youtu.be/jTRMF_KuiNM
「PSE認証という謎の世界、あなたはご存じですか?」
“電気工学の分野” と “法令の分野” にまたがる専門領域への知見、そして実務上の経験値が存分にモノをいうお仕事です、というお話
<プレゼンテーション:城下工業株式会社 PSE認証担当 吉田様>
https://youtu.be/5zbFTXMRcng