※この記事は二部構成のPart2となります。Part1はこちらからどうぞ。
さて、Part2は Canarino DC dueにちなんだ開発時のエピソードを五月雨調でお届けします。脈絡なく思いつくまま記すことになりましたので少々読みづらいかと思いますが、ウラ話的なものを垣間見つつお楽しみ頂けますと幸いです。ご興味おありの皆さまはどうぞ。
▽「Canarino DC due」をリリースしたことを切っ掛けに顧みると
Canarinoシリーズの発展を振り返ると、思えばそれは「PCの常識とオーディオ的価値観の折衷(融合)」を描いていました。Canarinoの世代進化を見ますと、以下のような軌跡を辿ることが出来ます。
・第一世代:ケースの高剛性化、ファンレス化、システムドライブとデータドライブの物理的な分離、信頼性の高いストレージの採用、BIOSチューン
・第二世代:拡張ボードなどのオーディオ向カスタマイズパーツの積極導入、リニア電源のオプション適用、外付型オーディオ向高品質光学ドライブのオプション導入
・第三世代:消費電力の大幅な増加への対応に伴う、オーディオ視点で良質なスイッチング電源への回帰(出力の向上、世代パワーデバイスの採用(GaN))
2022年が訪れた今、第四世代のそれは「ツイン電源化」
スクエアな言い方をしてみますと、これがCanarinoを立ち位置とした場合での “今、オーディオPCと呼称するための条件” “ハードウェア目線での現在の要件” とでも申しましょうか。「Canarino DC due」をリリースした我々のこのオプションパーツへの入れ込み具合、お察しいただけるかと。Canarinoユーザーの皆様には気軽なところでご導入頂きたく、プライスだってグッと堪えてリーズナブルにまとめてみたんですが。さて如何に。
< Canarino DC due(Canarino Fils 9 に装着)>
▽ここしばらくの間、想定外の事態に直面していました
オーディオパソコンの分野ではここ最近アタマの痛い問題が生じていました。それは「電力消費量の著しい増大への対処」 この傾向はIntelの第9世代以降のCPUから顕著に現れており、特にピーク時の値はこの段階で我々の想定を超えるに至りました。
CPUのスペックには動作時の放熱要件を指標化するTDP(熱設計電力)という項目があることをご存知の方もいらっしゃるかと存じます。(IntelのCPUでみますところ)コアがシングルであったり2コア程度の時分のCPUにおいては、この指標をもって“CPUの標準的な消費電力と近似値になるもの”として捉えることが一般的であったと思うのです。が、時は経ち、現在のような より多コアで構成されるCPUの時代を向かえますと、振る舞いやその解釈は往時の姿とは様変わりすることになります。そんな背景から、このTDPという指標をもって発熱の具合や消費電力量を単純に捉えようとすることは既に困難となっている事実、PCに知見の深い皆さまですとご承知でありましょう。またマザーボード毎のBIOSにおいてもCPUの振る舞いがコントロールされている事もあって、同じCPUにしてもその各々によって動作の様相が異なってしまうわけですから、今やCPUの発熱や消費電力の実態をしっかり捉えようしますと、判断に要するパラメータが多岐に渡り、容易に評価し難い状況に至っています。「電力消費量の増大の様については、いつのタイミングからか オフィシャルが開示する指標を利用してもシンプルには捉えきれなくなっていた」というわけです。
パソコン故の増減が激しい電力消費、その瞬間的な変動。加えてピーク値の増加傾向は継続していることから、動作安定性の確保に大きな役割を果たすであろう電力供給能力へのテコ入れは、解決策を提示せねばならぬ喫緊の課題としてここに顕在化したわけです。またこの問題は、従来オーディオ的価値観での定跡と言える「“我々が求める形での”パソコン向リニア電源」にもその適性に限界を覚えざるを得ませんでした。要は「オーディオ視点でのセオリーを阻まれる状況」に至ったわけで、必然として新たな道筋を求めることになります。その道は「パソコン視点での原点回帰」でした。
「パソコン視点での原点回帰」となりますと、一筋縄ではいかないPC電源を相手に真正面から向き合うことを迫られます。これは結果として、着眼点を変えるための大変よい(いわば強制的な)キッカケとなりました。
▽「PCに相応しい電源とは?」~ 着眼点を新たにしてみよう
「PCの常識とオーディオ的価値観の折衷(融合)」という観点からこれまでは単に電源方式の云々に終始していたわけですが、ここで着眼点を改めてみました。新たな一丁目一番地は「そもそもパソコンの電源とはどんな仕組みになっているのか?」として、PCそのものの姿を捉え直したこと。明瞭に言うならば、“ATX電源”というパソコンならではの構造に向けてスポットライトを向けてみたわけです。
一般論としてパソコンが消費する電力については、ATX電源規格を例にとると“規格に適合した電源ユニット”を通じPCの動作に必要な電力の一切が生成されます。そこからマザーボードに対して各々異なるコネクターを持った複数のハーネスを介す形で電力が分離供給されています。CPUの電源系統やその他デバイスが必要とする電源系統で考えますと、要する電圧も12V、5V、3.3V、etcとそれぞれで異なっています。
Canarinoで考えた場合、規格に則り電圧を適正化しマザーボードに対して直接電力供給する役目を果たしているのは、“ATX電源規格に適合したDC/DCコンバータユニット”です。その実態はワンボード化された形でCanarinoの内部に搭載されています。(PicoPSUというボードです) 外部に存在するACアダプターから供給されたDC12Vはひとまずこの“ATX電源規格のDC/DCコンバータユニット”に入力され、そのユニットによる電圧の生成処理を経ることで適切な電力がマザーボードの各部に対して分離供給される形を採るわけです。ご承知のとおり、Canarinoは見た目からしますとDC12V出力の外部ACアダプター仕様で構成されています。が、この外部ACアダプターは、筐体内部の「パソコン電源の本丸」ともいうべき“ATX電源規格のDC/DCコンバータユニット”に対してDC12Vを供給する役割を果たすに過ぎないので、電力を受給する側のマザーボードからすればそれは間接的な関わり合いでしかないのはご想像のとおりです。
< ATX電源規格に則り電圧を生成するDC/DCコンバータユニットの一例 >
ここで“ATX電源規格”と“マザーボードの構造”に少しだけ踏み込みましょう。
実のところATX電源ユニットとマザーボードの構造からしますと、CPUに対してはDC12Vを供給するラインが独立して存在しています。「この単独の電力供給ラインがDC12Vであるならば、DC12Vを出力する単一の外部ACアダプターから直接且つ独占的にこのポイントに対して電力供給する仕組みを仕込めないものだろうか?」として、我々はその可能性を探り始めました。
< マザーボード上のCPU用12V電源供給ポイント(黄黒ハーネスのコネクタ部)>
正直なところこれはある種思いつきなところがあって、「CPUの電力消費の増大に伴いパソコントータルの消費電力も右肩上がりの傾向を示すのであれば、この系統に12Vの外部ACアダプターを別立てすることによって、パソコン全体の消費電力から生じる供給の負担を複数のACアダプターに分散できはしないものか?」という極めて単純な発想でした。また、「それを実現することによって、サウンドにも変化が生じるかもしれない」という淡い期待もありました。ただ、そんな思いつきの手法を実現するパーツには心当たりがなくて そもそも試みたことすらありませんから、現実問題としてそんなに都合よく行くものかすら確証が持てないわけです。
そこで「物は試し」としてそんなギミックを実現する仕組みをDirettaと共同歩調で試作しつつ、「失敗上等!」とこの目この耳で実際に確かめてみたのです。すると、試作品のテスト段階で希望に沿う良好な動作を既に示していて、合わせて淡くも期待を寄せていたサウンドの変化についても裏付けすら取れる結果に至りました。この試みと良好な試験結果が暗闇に灯ったあかりとなって、Canarino DC due企画の実現へ向けた推進力になったこと、それは偽らざるお話であります。
< 最初の試作基板 >
▽電力の分離供給を実現出来たから、はじめて実態を認識できた挙動がある
Canarino DC dueとATX電源規格のDC/DCコンバータユニットとの連携で、マザーボードが必要とする電力を2つのDC12V外部ACアダプターから分離供給できる仕組みが構築出来てからというもの、はじめて実態を認識することができた挙動が色々とありました。これまで好事家の間では確かに話題に上ったことはあるものの、想像や推測の域に留まる議論に過ぎなかったお話です。挙動を目の当たりにして実態を把握することが出来たのは、我々にとっても知見の蓄積につながるとても貴重な体験と言えました。
【CPU側消費電力の負荷変動の激しさ】
最近の世代(Intel Corei Gen9以降)のCPUが単独で消費する電力の増減とその瞬間的変動の様子は、正直なところ想像を超えていました。無論激しいであろうことは予測していましたが、電力供給源のACアダプターの出力は瞬間的に50Wを超える幅で変動することもあって、そのピーク値は100Wを超える時も。実態は我目を白黒させるほどに衝撃でした。落ちついたかな?と思っても、いきなり反発的に増加したりまた下がったり、まさに言葉通りの乱高下。突発的で瞬間的な変動の様は「他の電気製品とはひと味もふた味も異なる、パソコンならでは振る舞い」なのでしょう。
またその世代(Intel Corei Gen9以降)のあるCPU(TDP35W)ですと安定していても40W近くは常時電力をACアダプターが出力しているようで、これも想像を越えるものでした。我々は過去において「パソコン適性を持たせた12V/60Wの外部リニア電源ユニット(ACアダプター/ディスコン製品)」をオリジナル製品としてリリースしていたのですが、これを供給源に使いますと、この変動のピークを満たすことは厳しいですし、40W近くの電力を常時供給しているとなると電源ユニットへの継続する負荷の掛かり方すらも気がかりになってしまい、本音ベースで予想を超えたところにありました。事実、この12V/60W外部リニア電源ユニット(ACアダプター/ディスコン品)の電力供給能力不足を起因として、組み合わせた第9世代以降のIntel CPUマシンの動作において不安定挙動が頻発したことも把握しています。この状況からしますと、頻発した不具合は不回避であったということになります。
< オリオスペックオリジナル PC用12V/60Wリニア電源ユニット(ACアダプター)(ディスコン品)>
ここで少し横道に逸れます。
実は、我々がリリースしていたパソコン用リニア電源(ディスコン品)は、高負荷の状態がある程度継続してもすぐには落ちないようにひと工夫を凝らすなど、パソコン適性を意識した仕様が謳い文句の製品でした。電源が要する特性としますと、“利用用途を鑑みた場合、リニア電源であればなんでもよいというわけではなかった”のです。独特な工夫を凝らしたパソコン仕様のリニア電源だったのですが、そんな自慢の子でも今現在のPCプラットフォーム全体に対してや、特にCPU用電源の供給が絡む形の使い方ではとても太刀打ちできないであろう事をここに見せつけられたのです。『従来オーディオ的価値観での定跡』で市場にアピールしていくのがもっともスムーズに、またある意味で楽に浸透していくのは事実でありますから、「“我々が求める形での”パソコン向リニア電源」が通用しなくなってしまった現実は、マーケティングの観点からしても我々を落胆にさせるに十分なインパクトでした。
では、前述の“ある程度無理の効く仕様”を諦めたとしてもリニア電源に拘りつつ、旧モデル以上の電力容量を稼ぐ製品を開発すれば・・・そんな考えだってもちろんあるように思います。それは正攻法のアプローチとも言えるのですが、実は極めて実現性に乏しい策であることを遥か以前から我々は認識していました。パソコン用電源の仕様において「ファンレスの実現」は、我々にとってマストの要件になります。それは“オーディオリスニング用パソコンに対する組み合わせ”がコンセプトにあるからです。(パソコン本体がファンレスであるにもかかわらず 組み合わせる電源ユニットがファン付ですと、それはもうギャグみたいな話になりますでしょ?)
オーディオ向けであって且つ大容量の電源ユニットとなりますと、特に安全が担保できる形でのファンレスを実現したいとなるのは当然の志向だと思います。が、そうなりますと、発熱処理の観点にしても常識的な外形寸法・重量へとまとめる事にしても、旧モデル以上の電力容量を望む形では実際問題として対応が難しいという見解、我々と協力ベンダーとの間の共通認識だったのです。仮にそれが実現しても、製造コストや販売価格、そして筐体の大きさや重量は果たしてどれほどになるものやら・・・。そんな現実を目の当たりにしますと、電源ユニットに対しては“工夫という名の誤魔化し”でなんとか凌げるレベルを既に超えてしまっている事、この時点で存分に思い知らされていました。我々は完全に追い込まれていたのです。
さて、このあたりで本論に戻りたいと思います。
ちなみに、CPU以外のその他デバイスへの電力供給(ストレージ等のデバイス向電力供給)については、消費する電力の増減とその瞬間的変動もさほどのモノではありませんでした。ピーク値は低くて変動幅もそれほどでもなく、起動後程なくして状況は安定してしまいます。プラットフォームの世代間ギャップも特段ないように見受けられます。
(ここ最近のプラットフォームにおいて)電力供給系統毎の様相の差違はあまりに極端な偏りで、「これほどまでに差違が生じるものなのか?」とあっけにとられる始末。「やはりパソコンの消費電力における負荷変動の主因はCPUの電力消費の姿にあるのだろう」 実態の比較が叶った今、我々はそのように認識しています。
【サウンド基調に対するCPU側電力供給源の影響、その他デバイス側電力供給源の影響】
同じく電源の供給系統に視点を置くと、その供給源となるACアダプターの違いでサウンド基調への影響がやはり生じるわけです。が、その度合すら系統によって差が存在していたことはこれまた驚きでした。CPU側にしてもその他デバイス側にしても多かれ少なかれサウンド基調に影響は及ぶわけですが、不思議と供給系統によって変化が明確に出現してくる側とさほどでもない側にハッキリと色分けされる傾向を示すのです。
CPU電源側の負荷変動の激しさは(度合は別にして)想像に容易かったものですから、変動の激しい側の系統がサウンドにも影響を与える割合が同様に大きいのではないか?と当初は推測していたのです。が、実態と見ますとその推測は的が外れました。実際にサウンド基調へ影響を及ぼす傾向を明確に示したのは、「CPU以外のその他デバイスへの電力供給側」、つまりは「安定しているはずのストレージ等への電力供給側」でした。
比較については、ツイン電源化したCanarinoを元に、MAIN側DC入力(CPU以外のデバイスへの給電側DC入力)とCPU側DC入力で別品番(別製品)のACアダプターを組み合わせてこれを動作させ、その再生サウンドをいちいちチェックしています。CPU側DC入力(CPUにダイレクト供給する側)の外部ACアダプターをチェンジしてもそれほど音色などに対して影響は生じてこないのですが、MAIN側DC入力(CPU以外のその他デバイスへの電力供給側)の外部ACアダプターは製品毎に音色などの様々なサウンド要素が顕著に変化してくるのです。もちろんCPU側ACアダプターでも影響が全くないわけではないのですが、さほど気にならない程度に収まっています。むしろ、違いがハッキリ聴き取れるのは明らかにMAIN側(CPU以外のその他デバイスへの電力供給側)のACアダプターでした。
考察は未完であるものの、この実態に対する理解は今後のCanarinoのアップデートにおいて存分に活かすことの出来得る結果でありましょうから、我々にとっては大変有意義な検証であった、そのように考えているところです。
< Canarino Fils 9 のケースと Canarino DC due (CPU側が上ポート / MAIN側が下ポート)>
【“CPU側電源への供給”と“その他デバイス側電源への供給”にそれぞれ異なるACアダプターを使った場合は果たしてどうなるのか?】
ここも驚きであったところです。また、Canarino DC dueをどのように使いこなすかのポイントになるところのようにも思いますので、ご参考にどうぞ。
前述の電力供給先(系統)の違いによるサウンド基調への影響度合を踏まえて、この特性を活かす手がないものか検討する価値は十分あるように思えました。そこで、電力供給負荷の低い傾向を示すこのMAIN側DC入力(CPU以外のその他デバイスへの電力供給側DC入力)に対して、前出の“弊社企画の12Vリニア電源(ディスコン製品)”にその役割を委ねてみようと考えたのです。現在のプラットフォームの全体やCPUに対して電力供給をするには荷が重くなってしまった“弊社企画の12Vリニア電源(ディスコン製品)”に関する有効利用法の検討とでも言いましょうか。
そもそも、Canarino DC dueの開発のキッカケはPCへの電力供給に関して負荷分散の可能性を探ることでした。また前述の検証の結果、負荷が著しく高いのはあくまでCPU側の電力供給であって、CPU以外のその他デバイスへの電力供給側ではさほど負担が掛かっていないであろう姿が把握できたこともあります。踏まえて、Canarino DC dueのMAIN側DC入力端子(CPU以外のその他デバイスへの電力供給側DC入力端子)に弊社企画の12V/60Wリニア電源(ACアダプター/ディスコン品)をまず接続し、Canarino DC dueのCPU側DC入力端子側(CPU側電源へのダイレクト供給側DC入力端子)にはGaN 12V/150Wスイッチング電源(ACアダプター)を接続する形で動作を検証してみました。平たく言うと“方式違いのパワーサプライによるハイブリッド的な組み合わせ”となります。この組み合わせ、「オーディオサウンド的に期待できるのではないか?」「新たなご提案に繋げられるのではないか?」 我々はまたそんな期待を抱いたわけです。
< Canarino DC dueのCPU側にGaN 12V 150W スイッチング電源、Main側に12V 60W リニア電源を >
で、その結果ですが。これ、「異種方式の組み合わせ、オーディオ的には推薦するのが厳しいだろう」という判断に至りました。過程を振り返りますと、結論を下す我々の側すら深く悩ますところでもあったのです、率直なところにおいて。
経過を少し詳しく記してみます。
実のところ、パソコンそのものの動作については全く問題が生じませんでした。起動もシャットダウンも再生アプリの挙動も、ブラウザからのインターネットアクセスやストリーミングサービスの利用も、動作安定性の観点からしますと正常です。普通のパソコンの用途であれば“問題は無い”という判断になったかと思います。
我々が引っかかったのは「再生したときのサウンドそのもの」でした。これ、我々にはどうにも違和感が生じるのです。タイムアライメントが揃わないというのか、バラバラで定位が崩れているような、サウンドステージに落ち着きが見られない感覚です。テスター2名が同時に、また日を改める形で何度も実試聴を繰り返しながら意見交換をしました。ACタップの差込みについてもトラブルが起こらないよう万全な配慮をしています。が、サウンドにはどうしても違和感や座りの悪さを感じる楽曲が常に存在しており、またこれがテスターの両名ともに同一の見解として意見の一致を見せたのです。
「聴感」という尺度は、主観が左右するある種曖昧な世界にあるわけです。しかしながら、対象のCanarinoそのものが“オーディオ用PCという看板を掲げた我々の手掛ける製品”であります以上は、この見解からしますと「組み合わせとして非推薦」という立場を採らざるを得ませんでした。あくまで“聴感覚という枠の違和感であって動作は正常”なのですから、それは我々も悩みに悩んだ末の決断、結論であります。なんとも「オーディオとは魔物」と申しましょうかね・・・。
さて。パソコンとしてみますとそこは挙動がしっかりと安定しておるわけですし、ユーザー様の中には「個人としては聴感上違和感を感じることはない」とのご判断によって異方式のACアダプターの組み合わせを自システムにおいて採用なさっている方も現実にはいらっしゃるのです。そのようなユーザー様のお声や導入事例についても考慮させて頂き、『異方式での組み合わせについては弊社としてあくまで非推薦の見解に立つものであって、禁忌の様な強い拒否の扱いというわけではない』とのスタンスを採るに至った次第です。
では、同じスイッチング方式において異仕様・異品番のACアダプターの組み合わせではどうなるか?という点も気になりますでしょう。この組み合わせについても、やはり同じ聴感上の違和感を我々は感じています。今現在我々がご推薦差し上げているGaNのスイッチング電源と従来型(非GaN)のスイッチング電源の組み合わせにおいても違和感を覚えましたし、共にGaNのスイッチング電源でありながら容量違いのACアダプター(12V/150Wと12V/108Wの品番違い品)を組み合わせたとしても結果は同様に座りの悪さを感じました。ただこれも、パソコンそのものの動作に関しては正常ですので、前述を踏襲する形で『弊社の立場としてはあくまで非推薦。但し、禁忌の扱いとはしない』とのスタンスを合わせて採ることとしました。
< 異仕様のスイッチング電源の組み合わせ(上:従来型(非GaN) 12V 108W / 下:GaN 12V 150W)>
【Canarino DC dueと組み合わせるツインのACアダプターについて、オリオスペックの推薦はどうなる?】
これまでのまとめとしまして、Canarino DC dueをツイン電源(ツインACアダプター)でご利用頂く場合は、『弊社の立場として、サウンドクオリティの観点から同一のACアダプターの組み合わせを強くご推薦する』『特に弊社により選別された、サウンド適性に優れる新世代のパワーデバイスGaN採用の12V/150W ACアダプターとの組み合わせを標準(推薦)仕様とする』という形になります。
が、最終的なご選択はユーザー各位の自己責任によるご判断に委ねさせていただき、また我々はそのご判断に異を唱えるものでもないことについてここに一筆させていただきたく存じます。
補足しますと、Canarino DC dueの仕組みによってパソコン電源のツイン電源ユニット化(ツインACアダプター化)を果たしたとしましても、受給側のCanarino本体から見ますと“あたかも一つのACアダプター”として動作しておりますでしょうから、そのような事象が発覚したのかもしれぬ、と想像をしておる次第です。この点につきましても、今後においてより深く考察を続けていきたいと考えております。
< Canarino DC due 推薦構成(標準仕様):GaN 12V/150W 4ピンPowerDIN ACアダプター x2 >
▽結びとしまして
「オーディオ向パソコン“Canarino”を活かすのための電源周りには、掘り下げて考察をする余地が今もなお残されている」
パソコンやその周辺をオーディオ的な視点で捉えようとすると、まだまだ解からないことだらけ。ひとつひとつを紐解きながら、将来に渡るアップデートの継続を見据えつつ結びの言葉とさせて頂きます。ご精読、誠にありがとうございました。
< Canarino DC dueを装着したCanarino Fils 9 (拡張カード未装着) >